M&Aの難易度は業界によって変わる
- Global PMI
- 2018年8月18日
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M&Aと言っても色々なタイプがあります。今回は、どういうM&Aが成果を出すのが難しく、どういうM&Aが比較的容易なのかを見ていきます。
経済産業省が2018年3月に調査した「我が国企業による海外M&A研究会」報告書によると、最も成功の割合の高い買収目的は「既存事業を補完する製品の獲得(54%)」「グローバルシェアの拡大(46%)」と既存事業の延長となっています。
他方、失敗の割合が高い買収目的は「新規事業への参入(40%)」となっています。成功の割合も7%ですので、やはり難易度が高いと言えます。
人材獲得や技術の獲得は、一見、失敗割合は低いですが、買収目的は達成できても、買収価値ほどの成功をもたらす場合も少ないのが現実で、それが成功割合の低さに出ています。
製造業のM&Aは比較的やりやすい、難しいのはサービス業
グローバルM&Aの年間件数の推移を見てみますと、2013年頃までは半分が製造業のM&Aでした。ここ数年は非製造業すなわちサービス業のM&Aが急増しています。
製造業の場合、日本本社の製品は既に一定のグローバルシェアが取れている可能性があります。その場合、買収先では日本本社の技術力やブランド力について理解があり、それが企業文化や価値観の融合を助けます。
また、シナジーを実現する上でも、買収先の営業等は売上増加のイメージを持ちやすいため、シナジー施策の一歩目のハードルが低くなります。
ところが、サービス業だと状況は全く違います。サービス業がサービスを買う場合、「日本で成功したサービス」というレッテルを貼られます。シェアもブランドも日本での話なので、日本で成功したサービスを導入しようとしても、結局のところ反対します。これがサービス業のシナジーPMIがうまくいかない理由です。
では、買収して100%の株主になったのだから違うではないかと思うはずです。私もそう思っていました。ところが、買収先のマネジメントは、売上が上がらないことはやらないのです。なぜなら、彼らにとって結果が全てで、売上が上がらなければクビになるという文化なので、売上が上がらないということには従わないのです。
このことを理解せずに、PMIを行っていることが日本企業のグローバルPMIが成功しない理由の一つです。
IoTの進展により今後増えるサービス業のM&A
製造業の世界もIoTの進展とともに、As a Service化が急速に進んでいます。価値の源泉がサービスの領域になれば、買収先もサービス企業が増えてきます。
買収金額もサービス企業の方が高い成長率に基づき、高額になりがちです。実際に、ここ数年、高額買収の件数が増えています。
サービス業のM&Aは、新規事業の参入になることも多く、難しいのも事実ですが、今後は避けては通れないもの。これをうまく成功させられるかどうかが、グローバル企業としてより重要となっています。
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